店舗の設計が進み、いよいよ工事見積が出てきたところで、
「想定していた予算よりかなり高い」ということは珍しくありません。
そこで慌てて、仕上げ材を安いものに変更したり、家具や照明を減らしたりすることがあります。もちろん、それで下がる場合もあります。
しかし、店舗工事では目につく内装材だけを削っても、思ったほど金額が下がらないことがあります。大切なのは、見積金額の大きい項目と、設計変更によって減額できる項目を分けて考えることです。
今回は、店舗の内装工事見積が予算を超えてしまったときに、どこから見直せばよいのかを店舗設計の視点から解説します。
まず「高い・安い」ではなく見積の内訳を見る
例えば、当初1,500万円程度を想定していた店舗工事が、見積では1,800万円になったとします。300万円減額する必要があります。
このとき、「床材を安くしよう」「壁の仕上げを変更しよう」
と考えがちですが、最初にやるべきことはそこではありません。
まず見積書を、
仮設・解体工事
軽鉄・ボード工事
床・壁・天井などの仕上げ工事
建具工事
家具・什器工事
電気・照明工事
給排水工事
空調工事
換気・ダクト工事
消防設備工事
サイン工事
諸経費
などに分け、どの工事にいくら掛かっているのかを把握します。
店舗によっては、意匠工事より設備工事の方が大きな割合を占めることもあります。特に飲食店では、厨房、給排水、ガス、空調、排気・給気などの設備条件によって工事費が大きく変わります。
減額するときは「金額の大きいところ」から考える
100万円の工事項目を10%削減しても10万円です。
一方、500万円の工事項目を10%見直せれば50万円になります。
そのため、予算調整では細かな仕上げ材を一つずつ安くする前に、金額の大きな工事項目に設計上の見直し余地がないかを確認します。
例えば飲食店なら、
「厨房レイアウトを変えることで排気ダクトを短くできないか」
「給排水設備をできるだけ既存配管の近くにまとめられないか」
「空調設備の系統や能力が過剰になっていないか」
「造作家具を既製品に置き換えられないか」
といった検討です。
単価交渉だけではなく、そもそもの工事量を減らせないかを見ることが重要です。
削ってはいけない工事もある
一方で、金額が高いからといって何でも減額できるわけではありません。
特に、
消防設備
避難に関係する部分
防火区画
厨房の排気・給気
必要な電気容量
給排水設備
防水
法令上必要となる設備
などは、単純なコストダウンの対象にはできません。
店舗では建物の条件や業態によって、建築・消防・保健所などへの確認が必要になる場合があります。
「見えないところだから削る」という考え方ではなく、必要な性能を確保したうえで別の方法がないか検討することが大切です。
デザインは「全部安くする」よりメリハリをつける
コストダウンで注意したいのが、すべての仕上げを均等に安くしてしまうことです。せっかく店舗をつくるのであれば、お客様の印象に残る場所まで削ってしまうのはもったいありません。
例えば、
入口正面の壁
カウンター
客席からよく見える壁
照明
サイン
など、お店の印象を決める場所にはある程度予算を残します。
その代わり、
バックヤード
厨房内部
目立たない天井
収納内部
などは仕様を整理する。
このように「残すところ」と「抑えるところ」を分ける方が、店舗全体の印象を保ちながらコストを調整しやすくなります。
造作家具はコスト調整しやすいポイント
店舗では、カウンター、収納、棚、ベンチなどを特注で製作することがあります。造作家具は店舗に合わせて寸法やデザインを自由に決められる反面、数量が増えると工事費への影響も大きくなります。
そこで、
「本当に造作する必要があるもの」
「既製品でも問題ないもの」
を分けて考えます。
例えばバックヤードの収納まで造作家具にする必要がなければ、市販の収納棚に変更できます。逆に、お客様からよく見えるカウンターは店舗の印象を左右するため、造作として残す。こうした優先順位をつけることで、デザインへの影響を抑えながら減額できます。
「一式」と書かれた項目にも注意する
見積書を見ると、
「電気工事 一式」
「設備工事 一式」
「雑工事 一式」
といった表記が出てくることがあります。
一式表記そのものが問題というわけではありませんが、金額が大きい場合は、どこまで含まれているのか確認することが重要です。
数量や仕様が分からなければ、
「この金額が適正なのか」
「どこを変更すれば金額が下がるのか」
を判断できません。
減額検討をする場合には、可能な範囲で内容を確認し、設計図と照らし合わせながら検討します。
相見積もりだけでは解決しない場合もある
「工事費が高ければ、もっと安い施工会社を探せばいい」という方法もあります。もちろん、同じ図面・同じ仕様で複数社から見積を取ることは、価格を確認する一つの方法です。ただし、1社だけ極端に安い場合には注意が必要です。
見積範囲が違ったり、必要な工事が含まれていなかったりすれば、契約後に追加工事となる可能性があります。
大切なのは総額だけではなく、同じ条件で比較できているかです。
工事費を下げるなら「見積後の設計」が重要
店舗設計は、見積を取ったら終わりではありません。
実施設計
↓
見積
↓
内容確認
↓
予算調整
↓
設計・仕様変更
↓
再見積
という作業を繰り返しながら、予算とデザインを合わせていきます。
この予算調整を一般的にVE(バリューエンジニアリング)と呼ぶこともあります。重要なのは、「安いものに変更すること」ではなく、「必要な価値をできるだけ残しながら工事費を調整すること」です。
予算オーバーを防ぐには設計初期から工事費を意識する
最も理想的なのは、見積が出てから大幅な減額をするのではなく、設計段階から予算を意識して計画することです。
例えば、
「総予算はいくらか」
「厨房設備にはどの程度必要か」
「デザインとして絶対に残したい部分はどこか」
「既存設備の何を利用できるか」
を早い段階で整理します。
店舗の場合、物件によって必要な設備工事が大きく変わります。そのため、物件調査と設計、工事費を別々に考えるのではなく、最初から一緒に検討することが予算オーバーを防ぐポイントです。
まとめ|店舗工事の減額は「何を削るか」より「何を残すか」
店舗の内装工事見積が予算を超えた場合、まず仕上げ材を安くするのではなく、見積全体を確認することから始めます。
金額の大きな工事項目を把握し、
残すもの
置き換えるもの
なくせるもの
に分けて検討します。
そして、法規や安全、店舗運営に必要な性能は確保しながら、お客様から見える部分には予算を残す。この順番で考えると、単に「安くなった店舗」ではなく、予算の中で必要な価値を残した店舗づくりにつながります。
ウエムラデザインでは、店舗のデザイン・設計だけでなく、物件調査、実施設計、施工会社との見積調整、工事監理まで含めて店舗づくりをサポートしています。
「工事見積が出たけれど予算を超えている」
「どこを減額すればよいのか分からない」
「デザインをできるだけ変えずに工事費を抑えたい」
といった段階からでもご相談いただけます。
店舗の新規出店や改装をご検討の方は、お気軽にウエムラデザインまでお問い合わせください。

